嫁をホームヘルパーと勘違いしてない?介護義務と新制度

もし夫の親に介護が必要になった場合、その介護はだれが主体で行うのでしょう。

ジェンダー平等と言われている昨今においても「介護は女性の役割」なんて考えが、未だに残っているようです。

この記事を読むことで、皆さんの中で曖昧となっている部分が少しでも紐解ければと思っています。

そもそも嫁という立場で義理の親の介護の義務ってあるのでしょうか。

そこで、法律面ではどんな定めがあるのか確認してみることにします。

「同居している嫁が介護すべき」という定めは法律にはない

昔に比べれば数は減りましたが、結婚して「妻」になれば、夫の家族の世話を一手に任されることは、決して珍しいことではありませんよね。


特に、長男の妻であれば、義理の親との同居を求められ、その挙句、介護まで任されてしまうなんてケースも少なくないはずです。


では、法律上、妻の義理の親への介護義務ってどのように扱われているのでしょう?


民法877条1項によれば「直系血族(祖父母や父母、子どもや孫など)及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。

従って、親の介護の必要性が発生すれば、その義務を負うのは血のつながった息子や娘たちであり、「姻族(婚姻によってできた親戚)」である嫁に、義理の親を介護する義務はありません。


「長男の嫁が義父母の介護をするのは当たり前」、「同居している嫁が介護するべき」などといった考え方に、法律上の裏付けは存在しないのです。

しかし、その一方で「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」とも定められています。(民法第752条)


おそらく、同じ屋根の下に住む家族なのですから、夫婦間での協力も考慮すれば、嫁が義父母の介護を手伝うのも致し方ないのかもしれませんね。

ご存知のように「嫁」は相続人に該当しないため、『遺産を分ける』という発想はありませんでした。

でも、義父母の介護をした嫁からすれば、

「介護の大変さはしてみないとわからない。介護の手伝いにもこないで財産は法定割合なんて虫がよすぎる」と思うかもしれませんし、介護に貢献した分もっと評価してもらいたいといった気持ちになるのも当然かもしれません。

そんな不公平感を払拭するために、昨今での法改正によって、嫁など相続人以外の親族が介護をした場合でも、その貢献度に応じた金銭報酬(特別寄与料)を相続人に請求できるようになったのです。

この制度は2019年7月から開始され、適用されるのは2019年7月1日以降に開始された相続、つまり7月1日以降に亡くなれた方の相続から利用することができます。


ですが、特別寄与料の請求権は、嫁を含む相続人以外の親族が無償で介護等をした結果、相続となった場合、これまでの労力を特別寄与として相続人に相続財産を請求できるといった権利にすぎません。

従って、この権利を得たからといって、自動的に相続財産を受け取れるわけではありません。特別寄与料の請求をしたいのであれば、期限内にご自身から相続人全員に権利の主張しなければならないのです。

この権利を主張できる期限については、亡くなられたことを知った日から6ヶ月以内または相続開始から1年以内です。介護等のお世話をされていた場合であれば、亡くなられたこと自体はわかるはずですから、6ヶ月以内が期限となります。

 

※類似記事 ⇒ ここから

特別寄与料としてもらえる具体的な金額は、原則、遺産分割協議の場で決められます。


「介護などの労務を提供した際の日当分 × 日数」が計算の目安となりますが、労務を提供した期間や、どれくらいの時間を割いていたかどうか等を、いかに相続人に理解してもらえるかが金額を左右するポイントになるはずです。


ただし、そもそも相続財産がない場合や、遺言があり分割について指定されていた場合には特別寄与料を受け取ることは困難となります。

必ず受け取れるものではないことは予め理解しておいて下さい。

 

特別寄与料を請求しても相続人全員の同意がない限り、財産を受け取るはできません。


懸命な介護してきたことを相続人に気持ちよく認めてもらうためには、確りとした事前準備が必要です。ご自身の苦労を理解してもらうために、日頃から証拠となるような細かな記録を残しておくことが大事です。


具体例で言えば、介護日誌などで日々の記録を残したり、介護事業者との連絡ノートや電子メールのやり取りなど、できるだけ詳細に残しておくといいでしょう。介護等で利用した経費についても残しておけば主張に含めることができるはずです。

特別寄与料を請求するには、このような証拠となる書類の準備を確実にしておくことが重要です。


それでも相続人が特別の寄与を認めない、または寄与料の額について合意できないとなれば、特別寄与料を巡って調停で争うことになります。


調停に進むことになると裁判所は特別の寄与を「無償労務の恩賞」ではなく、「財産形成の対価」として捉えます。
特別寄与料を請求する側にとってみれば、一段ハードルが上がり、場合によっては更に難航するかもしれません。

 

いかがでしたでしょうか。

特別寄与料はまだ新しい制度なので、確り認識できている相続人は少ないように思えます。その為、互いの話が噛み合わず、トラブルに発展するリスクも高くなるはずです。

もし特別寄与料の請求をご検討されていて、困っている方がいらっしゃれば、まずは専門家へ相談することをお勧めします。 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

それではまた。

スポンサーリンク