安易な利用は禁物に!相続税の配偶者控除の特例

相続が始まると、配偶者には、どの相続人よりも手厚い相続税の控除が認められていることに誰もが気づくはずです。

今回は相続時に配偶者控除を利用する場合、事前に覚えておくべき重要ポイントをできるだけわかりやすく解説したいと思います。

基礎控除枠と配偶者控除の使い分け

基礎控除とは、基本的にどの相続人にも適用され、基礎控除枠は、3,000万円+600万円✕(法定相続人の数)となります。

例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、法定相続人の数は合計3人とカウントしますので

3,000万円+600万円✕3人=4,800万円

つまり、遺産総額に対し4,800万円の控除枠があるといったことになります。

もし、被相続人の財産が2億円あったとすれば、遺産総額(2億円)から基礎控除枠(4,800万円)を

差し引き、課税遺産総額は1億5,200万円となります。

次に配偶者控除、つまり「配偶者の税額軽減」の特例について考えてみましょう。

あれば配偶者が相続した財産のうち、課税対象となるものが1億6,000万円までであれば、相続税がかからない制度のことをいいます。また、もしもその額を超えてしまっても、配偶者の法定相続分までであれば、相続税は課税はされません。

今回の事例の場合、そもそも課税対象が控除額を超えてませんので相続税はゼロ、要するに、非課税といったことになります。

配偶者の法定相続分

法定相続分とは、民法で定められた遺産を取得する場合の目安となるもので、配偶者の場合の法定相続分は、配偶者のみが相続人である場合はすべて、配偶者と子供が相続人である場合は2分の1、配偶者と亡くなった方の親が相続人である場合は3分の2、配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹が相続人である場合は4分の3といったように、ご家族の構成によって相続分割合は異なるのです。

確かに、配偶者の老後の生活保障や財産形成においても、少なからず配偶者の貢献はあったわけでこれらの事情を考慮すれば、手厚い優遇措置となるのも頷けます。

配偶者控除制度を利用する場合の5つの注意点

この特例の適用を受けるのであれば、注意しなければいけないことが大きく5つあります。

二次相続のことも考えて慎重な対応を

前述したとおり、課税対象が1億6000万円までなら全て非課税になります。

しかし、もし配偶者にすべての財産を継承させるのであれば、その決断には慎重にならなければなりません。

以下に具体例を挙げて詳しく説明することにしましょう。

【具体例】

財産額:1億5,000万円

一次相続の法定相続人:母、息子、娘

二次相続の法定相続人(母死亡時の相続):息子、娘

二次相続では、一次相続で母が相続した財産が消費されないまま残されていたこととします。

 

パターン1》母が1億5,000万円を単独で相続した場合

■一次相続  

相続税額:0円

 

■二次相続

1億5,000万円−基礎控除額4,200万円=1億800万円

 ※相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」

法定相続分:息子と娘各5,400万円

相続税額:1,840万円(息子と娘各920万円)

出典:国税庁HR 相続税の税率

 

⇒ 一次相続、二次相続の合計 : 1,840万円

 

《パターン2》一次相続で母子に分散させて相続した場合

1億5,000万円の財産を一次相続で母が7,500万円、息子と娘が3,750万円ずつ相続し、二次相続で母の7,500万円を3,750万円ずつに分けて息子と娘が相続した場合

■一次相続

1億5,000万円−基礎控除額4,800万円=1億200万円

法定相続分:母5,100万円 息子と娘各2,550万円

相続税額:665万円(母0円 息子と娘各332.5万円)

 

■二次相続

7,500万円−基礎控除額4,200万円=3,300万円

法定相続分:息子と娘で各1,650万円

相続税額:395万円(息子と娘で各197.5万円)

 

⇒ 一次相続、二次相続の合計 : 1,060万円

 

このように一次相続時に、二次相続の推定相続人にも財産を分散させれば、二次相続時の税額は軽減され、トータルでの納税額は安くなるのです。

 

未分割の財産には適用できない

配偶者控除は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産に基づき計算することになっています。

相続税の申告は被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内にすることになっていますので、もしもそれまでに遺産分割が成立していない場合、原則、配偶者控除を受けることができません。

ただし、相続税の申告の際に「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出しておけば、申告期限から3年以内に遺産分割が成立したときは配偶者控除の適用を受けることができます。

この場合、分割が成立した日の翌日から4か月以内に税務署に対して更正の請求をする必要があります。

なお、訴訟や調停などで3年以内に分割ができないやむを得ない事情があり税務署長の承認を受けた場合には、その後分割が成立したときに配偶者控除の適用を受けることができます。

 

相続税の申告は必ずおこなわなければならない

この制度の適用を受けるには、相続税の申告が必須となります。 

「非課税になり納税する必要がないのだから、申告する必要もない」と勘違いして申告しないと、配偶者控除を適用しない場合の税額を課税されてしまうことがあるので注意が必要です。

 

忘れないようにしましょう。

万が一、遺産分割協議を進めている途中で、配偶者が亡くなっても配偶者控除は受けられる

配偶者は生存しているものとして、被相続人の遺産について遺産分割することができます。

相続人の合意さえあれば、配偶者が受け取ることにした遺産についても配偶者控除を受けることができるのです。

遺産隠しをしたら配偶者控除は受けられない

当然ですが、仮装又は隠蔽されていた財産は配偶者控除の対象外となります。
これは、隠蔽・仮装したのが配偶者ではなく、他の相続人であったとしても同様です。

ここで注意しておかなければならないことは、すべての財産について適用できないわけでなく、あくまで仮装又は隠蔽していた財産のみということです。

たとえば、相続した財産のうち、2,000万円に仮装隠蔽があったとします。
仮に1億5000万円受け取っていたとしても、仮装隠蔽したのは2,000万円ですから、配偶者控除の対象外となるのは2,000万円分のみということになります。

きっと税務署としても正しい申告を行ってもらえれば問題ないので、状況を鑑みてすべての財産に適用できないとするのは厳しすぎるといった情けなのかもしれません。

もし、税務調査で見つかれば、修正申告をしなければなりません。その時に隠していた遺産については、もちろん配偶者控除を受けることはできません。

また、ペナルティとして相続税の重加算税が課せられることになります。

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くれぐれも、相続税は正しく申告し納税するようにしましょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。

相続税の配偶者控除は、控除額からして、非常に大きな節税効果が見込めます。

しかし、その反面、使い方次第では、本来よりも多く税金を納めなければならなかったり、遺産分割協議が纏まらなければ、特例の適用すら受けられないそんなリスクが潜んでいることも、忘れてはいけません。

もし、この特例の適用で迷うことがあれば、手遅れとなる前に専門家に相談することをお勧めします。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

それでは、また。

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