年収5,000万円でも老後が不安?高所得世帯に潜む“見えない落とし穴”
「老後資金が心配で…」 そう相談に来られたのは、年収5,000万円の会社役員のご主人と、会社員の奥さまのご夫婦でした。
数字だけ見ると「お金の心配なんてなさそう」と思われるかもしれません。 しかし、実際に家計を見ていくと、高所得世帯だからこそ起こりやすい落とし穴がいくつも見えてきました。
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■ ご相談者のプロフィール
- 夫:52歳(会社役員・年収5,000万円)
- 妻:47歳(会社員・年収300万円)
- 住居:高層マンション賃貸(家賃30万円)
- 趣味:海外旅行(年間100万円)
- 保険:終身保険(世帯で月4万円)
- 貯蓄:毎月20万円
- 預貯金:500万円
- 投資:新NISA(成長枠10万+つみたて10万/月)
- 資産:自動車・不動産なし
- 負債:なし
- 退職金:2,800万円
- 定年:62歳予定
■ 高所得なのに貯蓄が増えない理由
実はこのご家庭、 「収入が多い=貯まる」ではない典型例です。
最大の理由は、
● 税金と社会保険料の重さ。
年収5,000万円の会社役員の場合、
- 所得税
- 住民税
- 社会保険料 などが重なり、 手取りは約2,800万〜3,000万円にまで減ります。
つまり、 年収の40%以上が税金と社会保険料で消えているということ。
そこに
- 家賃30万円
- 海外旅行100万円
- 保険料4万円
- 生活費の膨張 が重なり、結果として 毎月20万円しか貯蓄に回らない構造になっていました。
■ 老後に必要な資金はいくらか
このご夫婦の生活水準を考えると、老後も
- 生活費:月40〜50万円
- 住居費:賃貸なら月20〜30万円
合計 月60〜80万円 が必要になります。
一方、公的年金は
- 夫婦で月22〜27万円程度
すると、毎月 38〜58万円の不足。 年間にすると 456〜696万円 の赤字です。
30年間生きると 1.4億〜2億円の老後資金が必要 という計算になります。
■ このままのペースで貯まる老後資金
62歳までの10年間で貯まる資産を試算すると…
- 預貯金:500万円
- 毎月20万円の貯蓄:2,400万円
- NISAの積立(年利3〜4%想定):2,800〜3,200万円
- 退職金:2,800万円
合計:8,500万〜9,000万円
必要額(1.4億〜2億円)には届かず、 5,000万〜1億円の不足が生じる可能性があります。
■ 保険はどうする?「やめる・続ける」ではなく“役割の再設計”が必要
今回のご家庭は、終身保険を世帯で月4万円支払っていました。 終身保険は悪い商品ではありませんが、老後資金が不足している家庭には“重い固定費”になります。
ここでよく出る質問が 「じゃあ外貨建て変額に乗り換えたらどうですか?」 というもの。
● 外貨変額の“良いところ”
- 終身より増える可能性がある
- 保障と資産形成を同時に持てる
- 高所得層が好む商品
確かに魅力があります。
しかし、このご家庭には 合わない理由があります。
● 外貨変額が“合わない理由”
- 老後まで10年しかない(短期運用はリスクが大きい)
- 為替リスクで元本割れの可能性が高い
- 資金拘束が強く、老後資金不足の家庭には不向き
外貨変額は“悪い商品”ではありません。 ただし、 老後資金が不足している家庭にとっては優先順位が低い というのがFPとしての結論です。
■ FPとしての最適解:保険はこう組み替える
① 終身保険は「払済(はらいずみ)」にする
→ 今まで払った分は活かしつつ、保険料をゼロにできる → 老後資金のキャッシュフロー改善に直結
② 必要な保障は「掛け捨ての定期保険」で確保
→ 月4万円 → 月5,000〜8,000円に → 浮いた3万円を老後資金へ → 10年で360万円以上の改善
③ 浮いた保険料はNISAへ
→ 老後資金の不足を埋める最も効率的な方法
■ FPとしてのアドバイス
● 住居費の見直し(最重要)
老後の家賃が老後資金を左右する最大要因。
● “貯蓄率”をKPIにする
手取りの20〜30%を目指す。
● NISAは継続
非課税枠は高所得層ほど効果が大きい。
● 保険は“軽くする”
老後資金が不足している家庭では、固定費の最適化が最優先。
■ まとめ:老後の不安は“老後の問題”ではない
今回のご相談で強く感じたのは、 老後資金の不安は、実は“現役時代の構造の問題”である ということです。
高所得でも、資産形成が進まなければ老後は不安定になります。 逆に、今の10年間を整えれば、老後は大きく変わります。
