相続放棄は慎重に!医療保険の請求

親が亡くなると、「入院給付金」や「手術給付金」の未請求分があった場合、相続人である子どもが請求手続きを行なうケースが多いと思います。

でも、これらの保険金を受け取ってしまうと、あとで相続放棄はできなくなる可能性があることを皆さんはご存知でしたか。

本記事では、相続放棄における生命保険の取り扱いについて詳しく解説したいと思います。

まず本題に入る前に、簡単に相続財産についておさらいしておきましょう。

そして、相続人への引き継ぎ方法は、大きく分けて「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3種類があります。

  • 単純承認

単純承認とは、相続人が被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことです。特に手続きを行わなければ、単純承認となります。

  • 限定承認

限定承認とは、被相続人の債務がどの程度かわからず、財産が残る可能性もあるなどの場合、相続人が相続したプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産の債務を引き継ぐ相続方法です。相続した財産以上に債務を引き受ける必要はありません。

  • 相続放棄

相続放棄は、相続人が被相続人の財産や債務を相続する権利を放棄することです。マイナスの財産が多く、引き継ぎたくない場合には、相続をすべて放棄することができます。

※関連リンク ⇒ こちら

状況にもよりますが、被相続人が多額の借金を残していた場合、相続人は誰も借金を引き継ぎたくはないはずです。

とはいえ、相続放棄をしたら被相続人の生命保険の受け取りは諦めることになるのか、生命保険金の受け取り手続きを進めた後、相続放棄ができなくなるなんてことはないのかなど、同時に不安になります。

でも、その辺は安心していただいて大丈夫です。

多くの場合、相続放棄をしても生命保険金を受け取れるはずです。

生命保険の受取人が指定されている場合には、相続放棄をしても保険金を受け取ることが可能です。

受取人が指定されている生命保険は、亡くなった親本人の財産ではなく、受取人の固有財産として扱われるからです。また、受取人が「相続人」とされている場合も受け取ることが可能となります。

相続放棄をした際に生命保険金が受け取れるかどうかは、「受取人が誰に指定されているか」が重要なポイントになります。

受取人が指定されていれば受け取れますが、亡くなった親本人が受取人になっている場合は受け取れないということです。

では、次の3つのケースから、もっと詳しく解説することにしましょう。
 

親が亡くなったあとに本来親が受け取るはずの入院給付金や手術給付金、通院給付金などの保険金を、子どもが受け取った場合、財産の単純承認をしたとみなされます。

このように相続財産として扱われるため、相続放棄ができなくなります。
 
ほかにも先進医療給付金などがあります。したがって、主契約以外に特約の内容もあわせてよく確認しておくことが大切です。
 

親の生命保険の受取人が子どもに指定されていれば、相続放棄しても保険金は受け取れます。

「受取人が指定されている」生命保険は、親の財産ではなく受取人(子ども)固有の財産だからです。
 

亡くなった親が生命保険の受取人になっている場合は、親が受け取るお金なので「相続財産」とみなされます。

したがって、相続放棄した場合は保険金を受け取れません。保険金を受け取れば、単純承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなります。
 
入院給付金などの保険金は、単純承認するつもりがなくても、つい受け取ってしまう可能性もあるので十分に注意しましょう。

死亡保険金は、本来は相続財産ではないが被相続人の死亡を原因として相続人が受け取った財産(みなし相続財産)として相続税の課税対象になります。

※関連リンク(国税庁HRより) ⇒ こちら

通常であれば、下記で挙げる生命保険金の非課税枠が使えます。


しかし、相続放棄した場合は「相続人ではない」とみなされます。したがって、保険金を相続放棄した人が受け取った場合、非課税枠は使えないことを理解しておきましょう。 

一度受理された相続放棄は、撤回することができません。

■民法第919条

1.相続の承認及び放棄は、第915条第1項の期間内でも、撤回することができない。

ただし、取消しは例外的に認められています。

相続手続が面倒で相続放棄したけど、やっぱり気が変わったといっても認められません。

必ず覚えておきましょう。

いかがでしたでしょうか。

相続の時期は誰にも予測できませんので、あらためて保険契約の内容を確認し、整理しておくべきでしょう。保険証券が読み解ければ、事前に対策も検討できますが、おそらく専門用語も多く、進めようにもよくわからない方が多いはずです。

モヤモヤするところがあれば、一度その分野に精通する税理士等に相談してみてもいいでしょう。きっと最善のアドバイスを貰えるはずです。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

それではまた。

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