農地相続は厄介で複雑!?農地法の定め
昨今、農地所有者の高齢化が進み、相続財産のなかに、畑や山林などが含まれている場合も少なくないはずです。
でも、都会で会社員などをしていて、農業の経験がなく、今後農業をする予定もないんだとしたら、農地を相続しても対応に困りますよね。
実際に、農地を相続すると通常の相続とは異なる制度が適用される場面もあり、手続きは非常に分りづらいはずです。
そこで今回は、農地の相続手続きにおいて、特に気をつけるべき点にフォーカスし解説したいと思います。
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農地相続に許可は不要
まず、農地を相続したら農業委員会への届出が必要となります。
農地法第3条では権利の移転設定をする場合、農業委員会の許可が必要と規定されてますが、農地を相続する際は、農地法第3条の許可は必要ありません。
※参考資料⇒農地法
もしも農地を売買するなら、勿論、許可が必要ですし、許可がなければその売買は無効となります。
ところが、相続というものは被相続人(亡くなった人)の死亡により当然に発生する効力であり、法律行為には当たらないのです。
よって、農業委員会の許可と関係なく相続の効力は発生しているため、許可は必要ありません。
また、遺産分割の場合においても、相続手続きの一つとして許可は不要となります。さらに、「(相続人)に(財産)を相続させる」と遺言書に記載されていた場合も、原則、遺産分割方法の指定と解釈され、許可は不要です。
相続と遺贈の違い
しかしながら、相続と似たような状況でも、農地法上の許可が必要となる場合があります。それが、相続人でない者に対する、特定の農地の遺贈です。
※遺贈とは、遺言書によって遺産を特定の人に渡すことを言います。
一般的に相続と遺贈は似たような制度と思われがちですが、相続は民法上の相続の資格を有する者(親族・姻族)だけが可能であるのに対し、遺贈は全くの他人でも受けることができるといった違いがあります。
相続人に対して農地を遺贈する場合、包括遺贈(財産内容を指定せず割合のみを指定して遺贈)でも特定遺贈(特定財産を特定人に対して遺贈)でも許可は不要であり、また、相続人でない者に対しても、農地を含む財産を包括遺贈する場合は許可は不要となります。
一方で、相続人でない者に対して農地を特定遺贈する場合は、農地法第3条の許可が必要となります。
この点は非常に分りづらいかと思いますので、十分注意する必要があります。
なお、死因贈与(生前に死亡を条件として贈与契約を結ぶ)の場合も、農地法3条の許可が必要ですので書き加えておきます。
簡単な表に纏めたものを以下に記載しておきます。
遺贈先 | 包括遺贈 | 特定遺贈 |
相続人 | 不要 | 不要 |
相続人でない他人 | 不要 | 必要 |
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農地相続の手続き
法務局での相続登記
まず法務局にて、農地の相続登記を行います。相続登記とは不動産の名義人が亡くなった場合に、名義を相続人へ変更する手続きのことです。基本的な流れは、自宅などの一般的な不動産を名義変更するための手続きと同じです。
農地を管轄する法務局へ、以下のような書類を集めて申請します。
- 被相続人の連続した戸籍謄本類
- 相続人の戸籍謄本
- 該当する農地を相続する相続人の住民票
- 遺産分割協議書もしくは遺言書 など
農業委員会へ相続の届出
次に市町村の農業委員会へ届出を行います。管轄の農業委員会がどこなのか分からない場合は役所で確認できます。届出の際には、農地法の規定による届出書と登記事項証明書を提出します。届出書は、農業委員会の窓口に設置されていて、記載事項は以下6点です。
- 権利を取得した者の氏名・住所
- 届出に係わる土地の所在等(所在・地番、地目(登記簿・現況)、面積、備考(賃借権などある場合記入))
- 権利を取得した日
- 権利を取得した事由
- 取得した権利の種類及び内容
- 農業委員会によるあっせん等の希望の有無
農業委員会への届出は、相続開始を知ってから10か月以内に行わなければいけません。
期限を過ぎて届出がされていない場合は「10万円以下の過料」を求められることがあります。
最後に
いかがでしたでしょうか。
上述したとおり、農地は宅地と違って農地法の制約があるため、手続きが複雑で難しいといった問題があります。
また、農業以外の用途で活用したい場合であっても専門知識がなければ手続きは困難なはずです。
いずれにしても、もし農地の相続について迷われたら、一度専門家へ相談することをお勧めします。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
それではまた。