相続人が行方不明!?失踪宣告とその注意点
こんばんは!
秋山です。
皆さんは、失効宣告といった制度をご存知ですか?
この制度、認められると法律上死亡したものと
みなされるみたいなんです。
少し怖いイメージしますよね。
今回はそんな失踪宣告をテーマに、重要なポイント
に絞り、わかりやすく解説したいと思います。
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失踪宣告とは
行方不明と聞くと、家出人をイメージする方が多いので
はないでしょうか。
過去10年間のデータによれば、毎年8万人以上の方が
行方不明となっているそうです。
この数字は、警察へ行方不明者届が提出された人数です
ので、実際にはもっと多いはずですね。
行方不明の状態が長期化すれば、
残された遺族や配偶者は、非常に困った状態が続いて
しまいます。
というのも、それが原因で、行方不明者の財産を処分
することができないといったような不安定な状態が続
いてしまうからです。
こんな状態を安定化させるために、一定の条件のもと
行方不明者を死亡したものと取り扱う制度が失踪宣告
なのです。
行方不明者を死亡したものとして、取り扱うことで
行方不明者の相続が発生し、残された遺族は
その財産を自由に処分することができることになる
のです。
このように、行方不明者の財産は、失踪宣告などの
手続きをしなければ、遺族が勝手に処分することは
できないのです。
失踪宣告が認められる要件とは
上述したとおり、失踪宣告とは、死亡したといった
確たる証拠がないにもかかわらず、
「法律上死亡したものとみなす」非常に強い法効果
を生む制度です。
よって、このような失踪宣告が認められるには、
死亡の蓋然性といった観点からすれば、
行方不明者の生死が不明な状態が、 一定期間継続
していることが必要であり、その継続期間こそが、
重要な判断ポイントにもなるのです。
死の蓋然的一定期間とは
大別すると、以下2種類あります。
普通失踪
この一定期間については、別に失踪期間とも言わ
れています。通常であれば、失踪宣告が認められる
ためには7年の失踪期間が必要であり、
これを普通失踪といいます。
普通失踪の場合は、7年間の失踪期間が満了を
迎えたときに、死亡したものとみなされます。
例えば、2021年4月頃から連絡が取れずに行方不明
となった場合、2028年4月頃に死亡したものと
みなされることになるのです。
特別失踪
一方、行方不明者が、戦争や海難事故などの死亡
の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った
あとの1年間、生死が不明な状態である場合に、
失踪宣告が認められ、
これを「特別失踪」といいます。
特別失踪の場合は、普通失踪の場合とは異なり、
危難が去ったあとから1年後に死亡したものとは
みなされるのではなく、危難が去ったときに死亡
したものとみなされます。
たとえば、2021年4月に乗船していた船が沈没して
行方不明となった場合であれば、
1年後の2022年4月ではなく、2021年4月に死亡
したものとみなされるのです。
失踪宣告の判断に迷った場合
行方不明者の失踪宣告にあたり、
普通失踪と特別失踪、いずれの方法を採用すべきか
判断に迷うケースもあるかと思います。
その場合、基本的に、普通失踪を基準に考えるのが
スタンダードのようです。
このほか、特別失踪と似ている制度で認定死亡と
いった特例的制度もあります。
認定死亡とは、震災や火災などにより死亡した
ことが確実視される状況下において、
死体など確認できなくても戸籍上、死亡したもの
として取り扱う制度です。
いまから約11年前、東日本大震災が起こった際、
被災者の遺族の保護を目的に、津波などによる
行方不明者の死亡の取り扱いについて政府が
特別措置を設けました。
やむを得ない事由によって診断書または検案書を
得ることができないときは、死亡の事実を
証すべき書面をもってこれに代えることができる
(戸籍法86条3項)
といった規定を柔軟に解釈し、震災時の状況や経緯
などを親族がまとめた書面の提出があれば死亡届を
受理したそうです。
このように失踪宣告は、非常に処理が煩雑なので、
行方不明者が死亡したことが確実視された場合には
まずは、官公庁に相談することをお勧めします。
失踪宣告の手続き
失踪宣告については、人の生死にかかわる重要な
判断が求められるため、利害関係人から申し立て
を受けた家庭裁判所が最終的な判断を下すものと
されています。
失踪宣告の申し立て
失踪宣告の申し立てをすることができる人は、
難しく言えば、失踪宣告によって法律上の利害関係
を有する者に限定されています。
行方不明者の単なる友人や知人、または検察官は
申し立てをすることが認められていません。
手続きの流れ
失踪宣告の申し立てにかかる手続きの流れは、
次のとおりとなります。
なお、申し立てから失踪宣告の審判確定までには、
1年程度かかるケースもあり、注意が必要です。
行方不明者が生きていた場合の処理について
失踪宣告は、あくまで行方不明者を死亡したもの
とみなす制度ですから、行方不明者が実は生きて
いたなんてケースもありのです。
例えば、行方不明者がもしも生きていて、残された
遺族のもとに戻ってきた場合を考えてみましょう。
知らない間に、自分の財産はすでに相続によって、
処分されていたことがわかれば、憤慨されるかも
しれませんよね。
これはほんの一例で、さまざまな法的トラブルが
考えられるはずです。
では、そんな状況をどのように対処すればいいの
か以下に解説します。
失踪宣告の取消について
まず、失踪宣告は、本人の生存が確認できたから
といって、自動的に取消はされません。
本人や利害関係人により、失踪宣告の取消を裁判所
に申し立てる必要があります。
失踪宣告が取り消されると、失踪宣告による死亡は、
最初から「なかった」ことになります。
遡及的に、失踪宣告による効果が消滅するのです。
要するに、
行方不明者はずっと生きていたことになるため
行方不明者に関する相続は開始せず、そのまま継続
していたこととなります。
行方不明者の相続について
行方不明者から相続により財産を得た人については、
失踪宣告の取消によって、上記のとおり相続が開始
しなかったことになるため、たとえ行方不明者が生き
ていたとは知らなくても、相続によって得た財産を
本人へ返還しなければなりません。
ただし、失踪宣告の取消による財産の返還については
現に利益を受けている限度において返還すればよいと
例外的に認められています。
よって、相続人等が浪費していた場合には返還する
必要はありませんが、
生活費に使用していた場合や住宅ローンの返済に充て
ていた場合は、その例外に該当しないため、
すべて返還する必要がありますので注意しましょう。
相続した財産を第三者へ売却した場合
相続人が、行方不明者の相続によって得た財産を
第三者に売却した場合でも、
原則からすれば、取引を遡及して財産を行方不明者
へ返還しなければなりません。
でも、それでは、そもそも失踪宣告といった事情を
知らない第三者が不当に害されてしまいますよね。
そこで、例外的に、相続人と上記第三者の双方が、
行方不明者が生存していることを知らなかった場合
両者の間で行われた取引の効力に、
失踪宣告の取消は影響しないものとされています。
以上から、行方不明者の財産の処分を目的として
失踪宣告を行う場合でも、十分な注意が必要です。
最期に
いかがでしたでしょうか。
本制度については、人の生死に関わることなので
非常に複雑な問題もあります。
例えば、失踪宣告が認められるまでの間、
その財産管理はどうしたらいいか、
また、もし仮に本人が生きていた場合なんかも
前もって、対処方法を考えておく必要があるかも
しれません。
最期までお付き合いいただきありがとうございました。
それでは、また。