空き家にしない選択—実家を売却して父が歩み始めた新しい暮らし

母が他界したあの日、実家の空気が少し変わった気がしました。長年家族を包んできた空間が、ふと静かになり、父と私の間に「これからの暮らし」を考える時間が流れ始めました。

父は迷いながらも、早い段階で決断しました。実家を売却し、自立型のリハビリホームへ移るという選択。空き家にせず、家を「手放す」ことで、これからの安心を「手に入れる」道を選んだのです。

この経験は、私にとってただの住まいの話ではありませんでした。家族の記憶、地域とのつながり、そして老後の暮らし方。すべてが重なり合う中で、空き家にしないという選択が、どれほど大切だったかを実感しました。

※過去の空き家シリーズの記事はこちら

空き家にしないという判断

母がいなくなった実家は、静かで広すぎる空間になりました。父はしばらくその空気を受け止めていましたが、ある日ぽつりと「この家は、もう役目を終えたのかもしれないな」と言いました。

その言葉をきっかけに、私たちは実家の今後について話し合いを始めました。空き家として残す選択もありました。でも、父は「誰かが住んでくれるなら、それが一番いい」と言い、売却を決断。地域の不動産業者に相談し、思い出の詰まった家を丁寧に手放しました。

売却後、父は自立型のリハビリホームへ移りました。介護が必要な状態ではなかったけれど、「自分でできるうちに、安心できる場所へ移る」という前向きな選択でした。新しい住まいでは、同世代の仲間と交流しながら、リハビリや趣味を楽しんでいます。

実家を空き家にしなかったことで、父の暮らしは整い、私たち家族も安心を得ることができました。家を手放すことは、寂しさだけでなく、新しい暮らしの始まりでもあったのです。

空き家と介護施設の選択肢

実家を売却して父が新しい暮らしを始めた経験は、私にとって「空き家は資産であり、選択肢でもある」という気づきにつながりました。

空き家を放置すれば、固定資産税や管理費がかかり続け、老朽化すれば近隣への影響も出てきます。けれど、早めに売却や利活用を検討すれば、介護施設への入居資金や生活の安心につながることもあるのです。

FPとして感じるのは、「家をどうするか」は単なる不動産の話ではなく、家族の未来をどう描くかということ。相続前に家族で話し合い、住まいの選択肢を共有しておくことで、いざという時に迷わず動ける準備が整います。

また、介護施設の種類や費用も多様化しています。自立型から要介護型まで、入居一時金や月額費用の違いを踏まえた資金計画が必要です。空き家を売却して得た資金を、「安心して暮らすための土台」に変えることができれば、それは家族にとって大きな支えになります。

空き家は、放置すれば負担に。けれど、選択すれば支えに。その分かれ道に立つ方々に、FPとして寄り添えることが、私の役割だと感じています。

葛飾区でできる支援と備え

葛飾区は、昔ながらの木造住宅が多く残る地域です。親世代が長年暮らしてきた家が、相続をきっかけに空き家になるケースも少なくありません。実際、区内の空き家率は都内でも高めで、放置されると景観や安全面への影響が懸念されます。

そんな中、葛飾区では空き家に関する支援制度が整いつつあります。

  • 空き家適正管理助成制度 剪定や清掃などの管理費用を最大3万円まで補助。遠方に住む相続人でも、最低限の管理がしやすくなります。
  • 老朽建築物除却助成金 解体費用を最大200万円まで補助。倒壊の危険がある住宅を安全に処理するための制度です。
  • 空き家ワンストップ相談窓口 相続、売却、利活用までを専門家が無料でサポート。FPとしても連携しやすく、相談者の不安を減らす場になっています。

こうした制度は、空き家を「放置しない選択」を後押ししてくれる大切な仕組みです。秋山FP事務所としても、地域の制度と連携しながら、資金計画や家族の選択を支える伴走者としての役割を果たしていけると感じています。

実家をどうするか迷っている方にとって、葛飾区には「相談できる場所」がある。そして、そこに寄り添える人がいる。それを伝えることも、私の活動のひとつです。

家を手放すことは、家族を守ることだった

実家を売却するという選択は、簡単なものではありませんでした。思い出が詰まった場所を手放すことに、寂しさや迷いもありました。でも、父が新しい暮らしを前向きに歩み始めた今、あの選択は「家族を守るための準備」だったと、心から思います。

空き家は、放置すれば負担になります。でも、早めに向き合えば、家族の安心や介護の備えに変えることができる。それは、資産の話であると同時に、暮らしの話でもあります。

葛飾区には、空き家に関する支援制度や相談窓口があります。そして、そこに寄り添う人もいます。私自身も、FPとして、そして一人の家族として、空き家と向き合う方々にそっと寄り添える存在でありたいと思っています。

家を手放すことは、終わりではなく、新しい暮らしの始まり。その選択が、誰かの安心につながることを願って——。

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