遺言書は信用重視!公正証書遺言が人気な理由
こんばんは!
秋山です。
今回のテーマは遺言書です。
なかでも、いま人気のある公正証書遺言について、
詳しくご紹介したいと思います。
Table of Contents
一般的な遺言書とは
ご存知のとおり、一般的な遺言書には、
自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類
あり、状況や目的に合わせ、ご自身に合った方式を
選択することができます。
では、それぞれどんな特徴があるのか簡単に
ご紹介しておきます。
※過去の関連記事 ⇒こちら
自筆証書遺言の特徴
遺言者が紙とペンを使い自筆で遺言書を作成する
形式で、特別な手続きが何もいらないので最も
ポピュラーな方法といえます。
故人の部屋から遺言書が見つかった等、一般的に
イメージする遺言書はこの自筆証書遺言です。
遺言者が、遺言全文・日付・氏名を自書し、
押印をすることで、その遺言書は遺言としての
効力が認められることになります。
公正証書遺言の特徴
2人の証人が立ち会いの下、公証人が遺言者から
遺言内容を聴き取りながら作成する遺言です。
作成した遺言書は公証人役場で保管されます。
専門家の元で相続人と確認を取りながら作成する
遺言書なので、確実性が高い形式であると
言えるでしょう。
秘密証書遺言の特徴
遺言者が自分で用意した遺言書を2人の証人と
同行して公正役場に持ち込み、
遺言書の存在を保証してもらえる形式です。
証人と公正人には遺言の内容は公開せず、遺言書が
あるという事実だけを確実にすることが目的です。
自筆証書遺言と異なり、
署名と押印だけご自身で行えば、
後の内容はPCでの作成・他の人の代筆が認められて
いるのも特徴の1つです。
公正証書遺言は信用性が高い
ここ数年では、
公正証書遺言の作成件数が増加傾向にあります。
日本公証人連合会のデータによれば、
2018年には、作成件数が11万471件まで増加し、
2009年の7万7878件と比べると約1.5倍に
なっています。
なぜ?って思いませんか。
その人気のワケは、
ずばり、「安心して作成でき、安全に保管できる」
からです。
では、公正証書遺言にフォーカスし、もう少し詳しく
解説したいと思います。
作成は公証役場の公証人
自筆証書遺言が自分の手で書くのに対し、
公正証書遺言は、原則的に公証役場で作ります。
2人以上の証人の立ち会いのもと、
公証人がパソコンで作成し、遺言を遺す人が、
記載された内容で間違いないかどうかを確認して
最後に署名・押印をして完成です。
公証人は、裁判官や検察官などを長く務めた
法律実務の経験者が選任されます。
証人が必要な理由は、
遺言者本人が遺言を遺すということ、誰かに脅され
書かされいているわけではないこと、認知症などを
患っておらず正常な判断能力が備わっていること
などを確認するためです。
証人として、身の回りでお願いできそうな方といえば、
友人や知人となりますが、誰でもいいというわけでは
ありません。
民法上、未成年者や相続人、財産をもらう知人は証人
にはなれないのです。
よって、もし証人として思い当たる人がいない場合は、
専門家や公証役場に相談してみてもいいかもしれません。
証人1人に対し、1万円前後の謝礼が必要となりますが、
紹介はしてもらえるはずです。
作成に必要な書類とは
公証役場で公正証書遺言を作成する際に必要な書類
などは、以下のとおりです。
ただ、公証役場によっては異なることもあるので
依頼を予定している役場に事前確認をしておいた方が
賢明かもしれませんね。
ちなみに、公正証書遺言は、全国どこの公証役場でも
作れます。
ただ、病気などで外出が難しく、公証人に出張して
もらう場合は、お住まいの都道府県内の公証役場にしか
依頼できません。
必要な書類
- 発行から3か月以内の印鑑登録証明書。印鑑登録をしていない場合は運転免許証やパスポート
- 遺言者の戸籍謄本
- 遺言者と財産を譲る相続人の続柄が分かる戸籍謄本
- 財産を相続人以外の人に譲る場合は、その人の住民票の写し
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)と固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書
- 預貯金の通帳のコピー。銀行の場合、銀行名、支店名、種別、口座番号、残高。ゆうちょ銀行では、記号、番号、種別、残高が必要です。
- 証人を知人に依頼する際には、その人の名前、住所、生年月日、職業のメモ
- 遺言執行者を指定する場合は、その方の名前、住所、生年月日、職業のメモ
- 公正証書遺言の作成日は、遺言者の実印(印鑑登録していない場合は、認印)、証人の認印が必要です
書類の入手方法
- 発行から3か月以内の印鑑登録証明書・・・市区町村役場の窓口
- 遺言者の戸籍謄本・・・市区町村役場の窓口
- 遺言者と財産を譲る相続人の続柄が分かる戸籍謄本・・・市区町村役場の窓口
- 不動産の登記事項証明書・・・法務局
- 固定資産評価証明書・・・市区町村役場の窓口。東京都の場合は都税事務所
- 固定資産税納税通知書・・・毎年、春ごろに市区町村役場から郵送
公正証書遺言の作成手順
公証役場での具体的な手順とは、
遺言者が、直接、公証役場に依頼するのか、士業などの
専門家に遺言書作成の補助を依頼するのかで違ってきます。
だからといって、どちらも法律上、特に決まったルールが
あるわけではありません。
よって、ここでは一般的に考えられる手順で
ご紹介することにします。
公証役場で直接作成する場合
まずは、公証役場に直接依頼する場合です。
ご自身で相続人の名前、主な相続財産、
具体的な財産の遺し方についてメモを書きます。
次に、公証役場に電話して相談日時を予約します。
予約当日は、公証人と相談ができるので、
メモをもとにご希望を伝えてください。
公証人からは、
戸籍謄本等の必要書類が伝えられますから、
後日、準備して下さい。
相談は、公証人や具体的事例に応じて、
1回で終わる場合もあれば、複数回になることも
あります。
相談料は無料で、相談の段階では証人の立会いも
必要ありません。
この後は、署名・押印をして公正証書遺言を
完成させる際の証人について、
あらかじめ決めておかなければなりません。
ご自身の知人に頼むのか、或いは公証役場に紹介
してもらうのか、検討してみましょう。
もし公証役場で証人をお願いする場合は、謝礼が
必要になります。(約6千円~1万円程度/1人あたり)
内容に納得できた場合、
そのまま署名と押印を迎えることになります。
公証人、遺言者、証人の予定を聞き、
都合の良い日時を予約します。
前もって、公証人から必要書類を伝えられるので、
郵送で送るか直接持参して下さい。
公証人は、事前に戸籍謄本等の書類を確認します。
当日の持ち物は、実印と公証役場の手数料です。
手数料の金額は、事前に公証人から伝えられます。
証人の持ち物は、認印と運転免許証などの身分証明書
になります。
公証人、遺言者、証人2人が揃ったら、直ぐ遺言書の
内容確認をするため、公証人が遺言書を読み上げます。
公証人が原本を、遺言者が正本を、証人が謄本を
それぞれ見ることになります。
公正証書遺言は、公証役場で保管される原本、
遺言者に交付される正本、謄本の3種類が作成
されることになります。
遺言者が内容を確認して問題がなければ、出席
した全員が署名・押印をします。
もし違うところがあれば、その場で公証人に申し
出て修正してもらいます。
署名・押印が終われば遺言書が完成し、
公証役場手数料や証人の謝礼を支払って終わりです。
後は、頂いた正本と謄本を大切に保管してください。
専門家に依頼すると、よりスムーズに
士業などの専門家に遺言書作成の補助を依頼する
場合ですが、大きな流れは変わりません。
同じように、ご自身で相続人の名前、主な相続財産、
具体的な財産の遺し方をメモに書きます。
相談したい専門家に電話をして日時を予約します。
専門家と話しながら作成することで、スムーズに
作れたり、遺産分割時にトラブルになるリスクを
減らしたりできる点がメリットです。
遺言書の内容が決まったら、
専門家が戸籍謄本などの必要書類を揃えて、
公証人と打ち合わせをしてくれます。
通常、依頼を受けた専門家が証人になってくれるので、
探す必要のある証人は1人だけです。
この後、専門家が公証役場に行くのにスケジュールを
調整してくれます。
当日に必要な手順は、公証役場に直接依頼する場合と
同じになります。
公正証書遺言のメリットとデメリットは
次に公正証書遺言のメリットとデメリットを説明します。
メリットのひとつ目は、裁判官や検事を経験した法律の
プロで準国家公務員の公証人が手がけてくれるので、
遺言書が無効になる可能性が低いことです。
2人の証人が立ち会うことで内容の信用性が高まるほか、
遺言を遺す人は、実印の印鑑登録証明書を提出するか、
或いは運転免許証などを見せるため、
本人確認も厳格です。
このほか、自筆証書遺言で必要となる家庭裁判所での
検認という手続きが不要になります。
※検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。 遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
ある公証人によると、公正証書遺言を作成しておくと、
内容に不満のある相続人が裁判をおこしても、
その内容をひっくり返すことは難しいとのことです。
それだけ、信用がある位置づけになります。
また、手が不自由でも、遺言書を遺すことができます。
なぜなら公証人がパソコンを使用して遺言書を作成して
くれるからです。
高齢だと握力がなくなり、綺麗に印鑑を押印することが
難しくなりますが、公証人に事前に申し出ておくことで、
公証人が代わりに署名・押印することもできます。
逆にデメリットとしては、
公証役場の手数料のほか、場合によっては士業などの
専門家に報酬を支払う必要が生じます。
作成費用は財産価格に応じて
作成の手数料は、財産の価格によって異なります。
具体的な手数料は、以下の通りです。
公証人手数料の計算
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
※公証人手数料令第9条別表 ⇒こちら
まとめ
いかがでしたでしょうか。
遺言書を作成するメリットは、相続人同士が遺産分割協議
という話し合いをしなくてもよいということです。
つまり、遺言書のとおりに粛々と事務手続きを進めれば
よいわけなので、精神的負荷がかなり軽減できるはずです。
ただ、身近な日常生活にはない手続きもあるので、もし
作成にあたって不安を感じたら、士業の専門家などに一度
相談してもいいかもしれませんね。
最期までお付き合いいただきありがとうございました。
では、また。