【実家が水害エリア】親が認知症になる前に「家族信託」をしないと家が売れなくなる理由
近年、日本各地で毎年のように発生している激しい豪雨災害。ハザードマップをチェックして、「そういえば、離れて暮らす実家は大丈夫だろうか…」と不安になったことがある方も多いのではないでしょうか。
もし実家が浸水想定区域や土砂災害警戒区域にある場合、万が一に備えて「売却」や「住み替え」を検討しておくことは非常に賢明な判断です。
しかし、ここに盲点があります。
「いざとなったら、子どもである自分が実家を売ればいい」
そう思っているなら、今すぐその認識をアップデートする必要があります。
なぜなら、もしそのタイミングで「親の認知症」が進んでいた場合、法律の壁によって実家が完全にフリーズ(資産凍結)してしまうからです。
今回は、豪雨リスクと認知症、そして実家を守るための法律「家族信託」について分かりやすく解説します。
Table of Contents
■ 1. 親が認知症になると、実家は「売ることも解体することも」できない
日本の法律では、不動産の売買や賃貸などの契約を結ぶ際、本人に明確な「判断能力(意思能力)」があることが大前提となります。
そのため、たとえ実の子どもであっても、親の委託を受けずに勝手に実家を売却することはできません。「実印や権利証があるから大丈夫」というわけにはいかないのです。親が認知症と診断され、判断能力がないとみなされた時点で、その不動産に関する手続きは原則すべてストップします。
もし、豪雨で実家が大きな被害を受けてしまい、「もう住めないから売却して、親の老人ホームの入居費用に充てよう」「危険だから解体しよう」と思っても、親が認知症であれば1歩も動かせなくなってしまうのです。
■ 2. 不動産取引で厳しくなる「豪雨リスク」の現実
さらに現在の不動産市場では、家を売る際の「水害リスク」のチェックが非常に厳しくなっています。
法律(宅地建物取引業法)の改正により、不動産取引の際には「ハザードマップにおける水害リスク」を買い手に説明することが義務付けられました。
つまり、災害リスクの高い場所にある物件は、放置すればするほど将来的に買い手が見つかりにくくなったり、売却価格が大きく下がったりするリスクが高まります。「被災する前に、動けるうちに売りたい」と考えても、親の認知症がネックになって売却活動そのものができなくなるという悲劇が、今増えているのです。
■ 3. 認知症後の救済策「成年後見制度」の落とし穴
「親が認知症になっても、成年後見人を立てれば実家を売れるのでは?」と思う方もいるかもしれません。
たしかに成年後見制度を使えば、代わりに手続きをすることは可能です。しかし、成年後見制度はあくまで「本人の財産を守るための制度」です。
親が実際に暮らしている家(居住用不動産)を売却する場合、家庭裁判所の許可が必要となりますが、「将来の被災リスクに備えて今のうちに売っておきたい」といった理由では、簡単に許可が下りないケースが多々あります。また、一度制度を始めると専門家への報酬などの費用が一生涯かかり続けるというデメリットもあります。
■ 4. 親が元気なうちにしかできない最強の備え「家族信託」
こうした「災害リスク」と「認知症による資産凍結」のダブルパンチを防ぐための切り札として、今注目されているのが「家族信託」です。
家族信託とは、一言でいうと「親が元気なうちに、実家の管理や処分の権利を信頼できる子どもに託しておく仕組み」です。
・委託者(財産を預ける人):親
・受託者(財産を管理・処分する人):子ども
・受益者(財産から得た利益を受け取る人):親
この契約を結んでおくと、不動産の名義が一時的に子どものもの(信託口)になります。
これにより、将来もし親の認知症が進行してしまっても、子ども自身の判断で実家をスムーズに売却したり、解体したりすることができるようになります。売却して得たお金は、もちろん「受益者」である親の介護費用や生活費として正当に使うことができます。
■ まとめ:ハザードマップと一緒に、親の「判断能力」の確認を
豪雨リスクの高い実家を守り、将来家族が困らないようにするためのタイムリミットは、「親が健康で、しっかりとした判断能力を持っているうち」です。すでに認知症が重くなってからでは、家族信託の契約を結ぶことはできません。
「まだ早い」と思っているうちに、災害や病気は突然やってきます。
まずは次の帰省などのタイミングで、実家のハザードマップを一緒に見ながら、「これからの実家の管理をどうしていくか」、家族信託という選択肢も含めて話し合ってみてはいかがでしょうか。
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